(はじめに) シンクロ機構ってなに?
ケイズ技研株式会社は、自転車や電動車などの乗り物や移動装置の企画、開発、製造、販売を手がけるベンチャー企業である。
2009年に企画開発型の個人事業としてスタートした。開業当初から開発に取り組んできた独自技術「シンクロ機構」が時代のニーズにあった技術であると高く評価されるようになったことを機に、シンクロ機構が装備された製品を製造販売すべく、2015年(平成27年)5月に法人に移行した。
シンクロ機構とは、左右一対の車輪を上下方向に互い違いになる関係をもって動かす仕組みである。発明者の同社社長・稼農公也(かのうきんや)氏は、機械設計の専門家で、かつては産業機械の開発にたずさわっていたが、あるとき、幼い兄弟を乗せたママチャリが目の前で転倒するというシーンに遭遇し、
「転倒せずに安定して走行できる自転車が作れないものか・・・?」
と自問したという。
これが、稼農氏が自転車や福祉車両の開発・設計に転身したきっかけとなった。
「安定して走行できる自転車」というと、多くの人が、三輪車を思い浮かべることだろう。3つの車輪を接地させることで車体のバランスが確保され、二輪車を運転できない幼児や高齢者でもペダルをこぐだけで前進させることができる親しみやすい乗り物だ。最近では、ピザの配達や宅配などの商用用途で、車体を揺らしてバランスをとる機能(揺動機構)を持つ三輪車を見かける機会も増えてきた。
しかし、三輪車は、平坦な場所を走行する分には問題ないが、左右の車輪の一方が溝に落ちたり、段差に乗り上げたりすると、車体が傾き転倒するおそれが高くなるため、実は「安全な乗り物」とは言えないのである。
揺動機構付きの三輪車でも、同様に車体の傾きが生じるので、バランス感覚が悪くなった高齢者が乗りこなすのは困難である。
上記の問題に対し、稼農氏は、左右一対の車輪にアーム部材(スイングアーム)を連結し、チェーンなどの伝達手段を介して双方のスイングアームを繋ぐことにより、一方の車輪の高さが変化したときに、その変化の方向とは反対の方向に他方の車輪を強制的に動かすことに思い至った(説明図1,2を参照。)。
これがシンクロ機構の基本原理である。
稼農氏は、この原理について特許を受けて、世の中に役立つ物を作ろうと決意し、ケイズ技研を立ち上げた。
シンクロ機構によれば、左右一対の車輪の一方が段差などにより押し上げられると、その押し上げによる変化の分だけ反対側の車輪が強制的に押し下げられて、双方の車輪が接地する状態が維持されるので、車体は傾かない。
一方の車輪が溝や穴に入って下がった場合も同様に、その下降による変化の分だけ反対側の車輪が強制的に押し上げられて、車体が傾くのを防ぐ。また、カーブを曲がる際にも、遠心力に追随するように自然に車体が傾斜して、横滑りを防ぐことができる(下図を参照)。
左右の車輪を連動させて互い違いに動かすための機構を備えた三輪車は、すでにいくつか世に出ていたが、専用部品が必要であるために非常に高価になる、車輪を連動させるための機構の配置に制約があって設計の自由度が低い、などの問題があったという。
これらの問題に関して、稼農氏は、
「シンクロ機構は、自転車などのチェーンやスプロケットという汎用部品を多用して組み立てることができるので、コストの嵩みを回避でき、手頃な価格で提供できます。注)
また車体の構造に応じてチェーンを廻す方向を自由に選択できるため、設計の自由度が高い。
左右の車輪の高さが異なる状態になった場合でも、2つの車輪を垂直な姿勢で維持させる事が可能なので、車体が傾くのを防ぐことができ、バランス感覚が悪くなった年配の方や女性でも安定した走行を維持することができます。」
と、シンクロ機構の利点を説明してくれた。
注釈)たとえば同社が開発した「iTrike配送用」は、従来のピザ配達バイクに代表される一人乗り三輪車と比較して、同程度以下の価格で提供する予定とのことである。
基本的な構造や原理はいたってシンプルなものだが、原理どおりに動き、強度や安全性が確保された設計が出来上がった後も、実際に製品を完成させるには、長い年月を要したという。
稼農氏は、幾度も試作やテストを繰り返した。それだけでなく、技術者目線の偏った開発にならないように、女性社員やモニター試乗者の意見を存分に取り入れ、エンドユーザーと目するママさんや高齢者らにとっての使い勝手の良さを追求した。
問い合わせについて
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という方は、下記のリンクより同社サイトにアクセスして連絡先等をご確認下さい。
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