特許技術・シンクロ機構に見たものづくり魂

「作れるもの」ではダメ!「作らなければならない」ものを作る!

- ケイズ技研株式会社 稼農公也社長 -

(その2)実用化を目指して

シンクロ機構・・・左の車輪が上がると右の車輪は下がる
    左の車輪が上がると右の車輪は下がる

 左右一対の車輪の一方が下がったら他方の車輪を押し上げ、

一方の車輪が上がったら他方の車輪を押し下げることで、車体を水平に近い姿勢で維持する・・・

 

 この原理どおりに動く機構の設計が完成した後も、稼農氏は、幾度も試作やテストを繰り返した。それだけでなく、技術者目線の偏った開発にならないように、女性社員やモニター試乗者の意見を存分に取り入れ、エンドユーザーと目するママさんや高齢者らにとっての使い勝手の良さを追求した。

 

 そのたゆまない努力により完成したのが、大人2人と幼児1人とが乗車できる3輪車

 「iTrike2.5人乗り」である(下図を参照。)。

iTrike2.5人乗りの構成


 背もたれや肘掛け付の大人用の座席が前面側に配備され、後部にゆったりとした大型幼児用座席を取り付けられる作りになっている。


 前後の座席を荷台やカゴに置き換えることにより荷物の搬送用に転換させた製品「iTrike配送用」と共に、平成26年度おおさか地域創造ファンドの助成を受けて開発された。

 いずれの車両も、前方にシンクロ機構付きの2輪が装着された電動アシスト自転車である。

 

 「iTrike2.5人乗り」では、前方の大人用座席に座った人の身体によって背後の運転者の目線が遮られることがないように、前方の座席の座面がサドルより十分に低い位置に設定されている。十分な強度設計がなされた車体フレームとシンクロ機構の作用とによって、前方座席は安定支持される。試乗させていただいた筆者も、全く不安を感じることなく、リラックスして走行を楽しむことができた。

 

iTrike試作車
iTrike試作車(後カゴは幼児用イスに変更可能)

運転者は同乗者の状態を確認しながら、同乗者は運転者との会話や景色を楽しみながら、楽しく移動ができるように・・・」という稼農氏の想いがあふれ出るような魅力ある製品である。

 

 運転免許が不要な自転車としての要件を満たす上に、多くの自治体で咎められずに大人二人乗りや幼児を含む2.5人乗りをすることができる注)そうで、老いて足腰が弱った親との外出や要介護者の送り迎えなど、多くのニーズを集める可能性があると感じた。安全かつ環境に優しい乗り物としても注目を集めそうだ。

 注釈)稼農氏の説明によれば、現在のところ、三輪以上の自転車に関して、23の自治体で「座席の数だけ人を乗せてもよい」とする例規や条例が置かれているそうである。

走行シーン
運転者も同乗者も視界を遮られることがなく、景色や会話を楽しみながら走行することができる。

 シンクロ機構が組み込まれた製品の開発は、三輪車に限るものではない。

 ショッピングカートやシルバーカーなどの四輪車についても、シンクロ機構が導入された試作品の開発が進められている。


問い合わせについて 

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